自民党に変わるオルタナティブな政党は出て来ないのか

自民党に変わるオルタナティブな政党は出て来ないのか:民主党による政権交代は悪夢だったが、それでも「政権交代」できる環境は必要だ

自民党が政権に復帰してから、早くも5年以上が経った。5年という間に、2009年の衆議院総選挙で政権交代を遂げた民主党は雲散霧消し、2009年~’12年の民主党政権に関する反省が出来る政党も、最早存在していないのが現状だ。

戦後レジームを築いた自民党

自民党は1955年の保守合同以来、1993年まで一貫して政権与党の座を維持し続けた。1993年には自民・共産を除く8政党による連立で自民党は政権の座を追われたが、その1年後には、犬猿の仲にあったとも言える社会党(当時)、そして新党さきがけ(当時)と連立を組み、『自社さ連立政権』を誕生させた。それからの『親方日の丸』改革潮流に関しても自民党は上手にその流れを政策に取り入れ、郵政民営化を含めた一連の統治機構改革(小泉政権下の”聖域なき構造改革”はその代表例である)を推進してきた。

自民党には独特な党内組織が存在する。「派閥」である。近年は党執行部への権限集中によって、以前よりは派閥の影響力が低下しているという指摘が多く見られる一方、依然として一定の影響力を維持している事は明らかであろう。現政調会長である岸田文雄氏に代表される『宏池会』や安倍晋三総裁が所属する『清和会』など、いわゆるハト派、タカ派に分類される派閥が存在している。興味深い点は各派閥によって、政策に対するスタンスが異なることである。それぞれの派閥は非常に複雑な集合離散と政策の変遷を繰り返してきた為、詳細な言及は控える。ただ、前述した宏池会と清和会に限り、それぞれの派閥の現在のスタンスを評価するのであれば、宏池会は”憲法改正を重視せず”、”外交安保政策に関して融和的”であると評価することが出来、清和会は”自民党結党の意義を重視(憲法改正含む)”し、”外交安保政策はタカ派的な姿勢をとる”と評することが出来るだろう。いずれにせよ、自民党には大きく分けて「タカ派」と「ハト派」という2大政策軸が存在しており、それぞれの軸が適度にバランスを取りながら「自民党政権」という枠組みの中で擬似的に政権交代を果たしてきた。当然、この擬似的な政権交代のプロセスには国民の直接的な関与は存在していなかった。あくまでも自民党内の権力闘争の域を脱していなかったのである。

この「擬似的な政権交代」が繰り返される中で、安倍総理の言う戦後レジームが形成されてきた。戦後レジームの代表例とも言える憲法9条問題について言及するのであれば、55年体制下の自民党が一貫して憲法改正に取り組む事が出来なかったからこそ、”解釈改憲”という抜け穴を利用することで事実上の憲法改正を遂げ、現在の歪な『憲法9条解釈』が成り立っている。今国政を賑わせている政治家と官僚の関係性に関しても、(かつての)自民党が『官僚との上手い付き合い方』を構築できていた(官僚組織主導の利益配分型行政が行われていた)と言っても決して過言ではないはずである。これらの事柄を換言すれば、自民党という政党は、戦後日本の正負の両側面を築いてきたということであろう。

政策方針の変更から疎外された国民

しかし、繰り返しにはなるが、これらの政策変化の過程からは国民の存在が疎外されてきたのである。ハト派の候補者であれ、タカ派の候補者であれ、「自民党」という看板が掛かっている事には違いがない。政策転換を求めようが、求めまいが、『取り敢えず自民党に投票するしかない』という構造が形成されてきたと言えるだろう。この結果として、自民党には政権運営に関するノウハウが蓄積されてきた。1993年の8党連立政権に関しても、2009~2012年の民主党政権にしても、「総選挙から次の総選挙まで」という期間を生き延びることは出来なかったのは、そのノウハウが余りにも欠けていたからに違いない。そして、国民の間にも「自民党を代替しうる政党を生み出そう」という気運がなかったがために、そういった非自民政権に対して不寛容であったのであろう。加えて言えば、2000年代初頭の小泉政権下で『自民党をぶっ壊す』をスローガンに、派閥の解体が推進された結果、以前と比較した場合には総裁に権限が集中するようになったものの、依然として自民党内の派閥は、他党におけるグループよりも、党に大きな影響を与えていると言えるだろう。

ただ、この状況が、つまりは「自民党以外が政権を担い得ない」という状況が、日本の民主主義の発展にとって好ましい状況かと言うと、決してそうとは言えないだろう。自民党が自らをそう称する様に『国民政党』として、オールマイティに政策課題に”柔軟に対応する”ことも可能性としては留保されるべきかもしれないが、実際には『取り敢えず自民党に投票して、後は自民党内の議論に委ねよう』という姿勢は余りにも受動的な政治姿勢では無いだろうか。 だからこそ私は、間接民主主義の根幹である選挙という行為に於いて、「政策変化」の発生を国民の手に委ねるべきである、と考えている。

自民党には自民党の存在意義がある:目指す方向性とは?

「政策変化」の発生を国民の手に委ねるためには、自民党に変わりうる政党が誕生することは不可欠であろう。自民党が今後どの様な政策方針を示すかは、予測の域を出ないが、私なりの予測を立ててみたい。まず、自民党の今後の政策方針として、内政に関しては”小さな政府志向”は引き続き重要視されるだろう。20世紀最後の省庁再編を初めとする「統治機構改革」の流れ、そして国鉄民営化・郵政民営化に代表される行政機能の民営化の流れを引き継いだ”小さな政府”志向は容易には変化しないだろう。外交に関しては、一定の振れ幅はあるだろうが、現在の日米同盟重視、対中/対韓の戦略的連携の増進といった方向性は基本的に維持されると考えられる。(逆に言えば、現在の安倍政権の外交安保方針は、基本的にはグローバル・スタンダードの潮流に沿った妥当なものであるとの評価を加えることが出来るだろう。)

仮に、自民党がこれらの政策方針を維持する状態を想定する。その際にその存在が期待される「政権交代可能な政党」とは、一体どの様な政党だろうか。私はその条件の1つに保守政党であることが挙げられると考えている。

そもそも、55年体制下で野党の座を中心的に担ったのは、他ならぬ社会党である。戦前から国内に存在する”非共産党”系の社会主義勢力3派が合同して結成された政党である社会党は、その出自もあって、政治的論争を呼ぶテーマ(例えば日米安保や憲法問題)に関しては非常にナーバスな対応を取らざるを得なかった。党の方向性すら明確な方向性を示すことが出来なかった(左派への配慮によって、党の”社会民主主義”への方針転換が未達に終わったなど)政党に、それらのテーマに関して一定の方向性を見出させる事が難しい事は自明であろうが一方で、そういった”曖昧さ”が、自民党への挑戦を不可能にしてしまったと考えることも可能であろう。

こういった歴史的事実を鑑みた際に、一般的に左派的な主張とされる革新的な主張は、その”空想性”や”非現実性”が相まって、その方向性の維持に困難を極めることは容易に想像できるだろう。だからこそ、そういった政党内の論争が起きにくい”保守政党”、現行社会の維持発展を目指そうとする思想が、政権を担いうる政党にはふさわしいのではないだろうか。加えて、日本における「保守」が、天皇を中心とする皇室の存在を絶対的前提にしている事は言うまでもない。現状、日本国民の間で”皇室に対する崇敬の念”が普遍的なものである事を考慮しても、保守という概念ことが、国民にとって受け入れられやすいことも明らかである。

また、現在の自民党が「小さな政府」を志向する政党とするのであれば、この新政党は「大きな政府」を方針とすることも十分に考えられるだろう。これは、ただ単に福祉政策を中心とする所謂”リベラル”な政策を重点的に取り組むという事のみならず、「巨大化した官僚組織=悪」というある種の固定概念に対する挑戦を行う、という意味合いでもある。ただ、外交安保政策に関しては『極めて現実的な』換言すれば、『日本の国益を最優先する』政策立案が求められることは、かつての社会党や民主党を反面教師にして学ぶことが出来るだろう。(但し、民主党政権に関しても防衛大綱の抜本的見直しを行うなど、その政策は一概に否定されるべき性質のものでもない。)

付言にはなるが、当然の認識として、”公約的”や政策ではなく、実務的な政策を党内で議論集約出来る体制の整備は欠かせない。これは、党の組織として十分な人員とシンクタンク機能を確保している事を意味する。党として打ち出す政策の方向性は党所属の議員に依るとしても、それらの政策を実務的に詰める事ができる党組織・職員の存在は言うまでもなく重要である。

長い時間を掛ける忍耐力が必要だ

いずれにせよ、与野党問わず、政党の在り方の現状は、日本の民主主義の発展に必ずしも寄与するものではない。政権交代が起こりえないことで、自民党に一定の安心感があることは間違い無いであろうし、野党の大半は、『安倍政権打倒』という中身のない事柄に執着している現状がある。

この現状を打破し、「選挙」において投じられた票の重要性を各政党に認識”させる”為には、選挙によって政権交代が為されるかもしれないという環境を作るしかないであろう。そのためには、国民の間でも、2009年の様な”政権交代への煽り”を起こさずに、冷静に政党を育ててゆく覚悟が求められる。そして、その環境が醸成された際には、政治家には国民の期待に答える政党を誕生させる責任がある。

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