18歳成人-改正民法成立:国民的議論の喚起を

政策提言

18歳成人に関する国民的議論

6月13日、参議院本会議で改正民法案が可決・成立した。この法案の主なポイントとしては、なんといっても2022年4月から始まる「18歳成人」にあると言えるだろう。

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18歳成人、というと、突如降って湧いたかの様な印象をお持ちの方も多いと思うが、実際には、国会内で度々議論なされてきたテーマであった。最近の国会議論を振り返ってみても、2007年の国民投票法成立以降は、特に「18歳選挙権」との兼ね合いで議論されていた。

筆者自身は、「18歳成人」そのものは、少なくとも反対の立場ではない。むしろ、いわゆる「若者政策」の一貫として、非常に注目をしている向きがある。然しながら、その立場であっても今回の法案審議の過程において、「国民的議論の喚起」がなされなかったことは、非常に残念に思わざるを得ない。飲酒・喫煙やギャンブルに関する年齢制限は緩和されなかったとは言え、一定期間にわたって社会的に理解がなされてきた『20歳』という基準が引き下げられる、このことは非常に大きな意味を持つことは言うまでもない。働き方改革関連法案などといった他の重要法案が国会において審議されていたとは言え、メディアを中心として、もう少し効果的な国民的議論の喚起はなされ得なかったのか、十分に再考する必要があるのではないだろうか

今後の議論されるべき事柄とは

とは言え、法案が通過した以上は、『如何に混乱なしに』改正民法を施行し、18歳成人に関する国民的理解を得ていくかが肝要となる。その際に検討していく課題としては主に次のものが挙げられるだろう。

  1. 選挙教育に留まらない『主権者教育』をどう担保・実施していくか
  2. 18歳/19歳を「完全な成人」として扱う法改正を目指すのか
  3. “被選挙権年齢引き下げ“を如何に扱うか

1点目に関しては、今回の成人年齢引き下げによって可能となる「合意・契約」であったり、その延長線上に存在する「金融リテラシー」といったものを、如何に主権者教育(シティズンシップ教育)の中に盛り込み、全国の小学校や中学校、高等学校といった教育機関で実施をしていくか、ということである。18歳選挙権当時は総務省が中心となって「私達が切り拓く日本の未来」と題した副教材を、民間の委員も交えて編集・発行したが、18歳成人に際しても、少なくともこの様な対応が求められるようになることは間違いない。

2点目の「完全な成人」問題とは、主に少年法適用年齢や飲酒・喫煙可能年齢などといった、ある種の社会的保護を今後も(半永続的に)18歳・19歳に与えていくのか、ということである。この問題は、遠からず、必ず(いずれかの場所で)議論されることになるだろう。筆者としては、例えるのであれば、階段の踊り場の様な位置づけとして、言い換えれば『半分大人・半分子供』として社会的に位置づけることも十分に考えられると思うが、ここに関しては、十分に国民的議論がなされる必要がある。

3点目の「被選挙権年齢引き下げ」に関してである。被選挙権年齢の引き下げは、昨年の衆院選においても、与野党各党が公約として提示をしていたが、今回の改正民法案の成立によって、その動きが加速することは間違いないだろう。選挙に当選する為には、有権者による判断が欠かせない。従って、被選挙権年齢の引き下げというものが、日本の政治システムに悪い影響を与えることは(良い意味で)考え難い。一方で、被選挙権年齢を引き下げ幅に関しては、各議会の性質に基づいて、十分に考慮されるべきであろう。

いずれにせよ、「18歳成人」という語感が、当事者間で若干の戸惑いをもって受け止められている様な印象は拭えない。18歳成人に関して、そしてその次のステップに関して、若年層を中心とした国民的議論が喚起されることに期待したい

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